日本酒
チーム山形でオール山形の酒づくり
栄えあるGI指定
米・水・人…雪国ならではの
「吟醸王国やまがた」
名峰から流れ出る滋味豊かな水が大地を肥沃にし、この大地が良質な米を産出する。そしてこの米が、厳寒期の澄んだ空気と白銀の雪に囲まれて醸し出す…。雪国ならではの酒造りに好適な風土を持つ山形県。全国新酒鑑評会で、全国有数の金賞受賞数を誇り、近年は「吟醸王国やまがた」の地位を確立した。
特筆したいのは2016年、山形県の清酒が国税庁より、地理的表示GI「山形」の指定を受けたことだ。農産物や酒類等、地域に育まれたブランドを保護する目的で制定されたGIだが、清酒が都道府県単位で指定されたのは初めてである。
雪解け水からなる優良な地下水が酒造りに適し、鉄分の少ない軟水を仕込み水にすることが、透明感のあるやわらかな酒質に生かされたとの評価。また、県工業技術センターと県酒造組合を中心に、官民一体となっての醸造技術向上と人材育成への取組みが認められた。
このGI指定は国内外から注目を集めており、県産日本酒GI「山形」のさらなるジャンプアップが期待されている。
山形県産原料100%を実現
「DEWA33」
現在県内には53の酒蔵があり、江戸時代以前から連綿と継がれてきた老舗も多い。先に記したように恵まれた風土が、酒どころとしての長い歴史を紡いでいる。
時を経て、昭和後期。県工業技術センターと酒造組合などが開発プロジェクトを組織し、県農業総合研究センターが11年がかりで山形県オリジナルの酒造好適米「出羽燦々」を育成した。同時に酵母や麹菌の研究も進め、「山形酵母」やオリジナル麹菌「オリーゼ山形」等を開発し、新しい酒造りに取組んだ。目指したのは、原料全てを山形オリジナルとし、精米度数にもこだわった100%の山形酒だ。
1995年、共通の酒質基準を満たしながら、それぞれの酒蔵が個性を競う「純米吟醸酒DEWA33」が誕生。その基準は、「県産の酒造好適米『出羽燦々』を100%使用・純米吟醸酒・精米歩合55%以下・山形酵母使用・山形オリジナル麹菌『オリーゼ山形』使用」で、もちろん水は当地の豊かな水を使う。これらをクリアして、厳正な審査会を通り、「DEWA33」の称号が与えられ、商品ごとに認定マークが表示される。
生酒をフレッシュなままびん詰する冬の「しぼりたて」、低温貯蔵で吟醸香も豊かな夏の「生酒・生貯蔵酒」、仕込みから約10カ月熟成された「秋あがり」…。純米吟醸酒「DEWA33」は、共通して「やわらかくて、幅がある」と評判を呼ぶこととなった。
山形県産の酒造好適米「出羽燦々」。燦々と輝く米であれ!との願いを込めて…。
山形県には1400m級以上の山が33ある。「出羽山々」「出羽燦々」などとの関連もヒントに、純正山形酒を「DEWA33」と命名。
「出羽の里」「雪女神」
山形県産米で良酒を次々と
続いて県は酒造好適米「出羽の里」を開発。山田錦と美山錦の流れをくみながらも心白が大きいため、効率の良い原料米となる。これを生かし高品質でリーズナブルな酒を目指した結果、2005年、70%精米の純米酒「出羽の里」を完成させた。この酒は「品良くしっかりとした旨味と雑味のないクリアな後味」が特長だ。
さらに、山形県産米を使った大吟醸酒ブランドを確立させるべく誕生したのが、酒造好適米「雪女神」。大粒でタンパク質含有率が低いという、大吟醸酒向け原料米に必要な品質を備えている。「雑味のないスッキリした飲み口ときれいな酒質」から雪女神と命名された。
ところで、平成に入ってからは貯蔵管理方法と設備も大きな技術革新があった。一般に酒蔵では冬期間に醸造し、3月の最終搾り後に調合して殺菌・貯蔵するが、これでは造り初めの酒が劣化することもある。そこで、搾った酒はすぐに殺菌して低温貯蔵する方法に切り替えた。こうすれば、新酒の香りとフレッシュさを失わずに製品化できる。県下の酒蔵は、設備類の導入や改善をいち早く実行。
地酒人気銘柄ランキング一位をはじめ、内外の品評会やコンテストでも、高い評価を得ている県産酒。2018年には、本県を会場に世界的にも有名な英国のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)「SAKE部門」審査会が開催され、さらに、「日本一美酒県 山形」を世界に向けて発信している。